ワリオです。理解しにくい仮陸揚貨物と積戻しについて関税法と外為法を横断的にまとめた記事です。
貿易業界で有名なブログ「貿易ともだち」K・佐々木様が2021年6月13日の記事『関税法と外為法との横断的理解』で、前の私のブログ「通関士勉強ブログ」から記事を抜粋してくださっているのを発見してテンション上がりました。
『関税法と外為法との横断的理解』 : 貿易ともだち (exblog.jp)
ブログ「なくたぬきの日々」でもおすすめ個人ブログ5選として紹介されているブログです。東京界隈の通関士の中では個人が特定されていて「〇〇会社の××さんだね」と有名なんだとか。
通関士試験のおすすめ個人ブログ5選 | なくたぬきの日々 (nakutauki.xyz)
ということで、このオリジナルの記事を改めて投稿しました。
外為法上の「輸出」と「輸入」
「輸出」
- 内国貨物、外国貨物にかかわらず、貨物を外国に向けて送り出すことをいう。
- 関税法でいう「輸出」のほか、「積戻し」も含まれる。
「輸入」
- 外国から到着した貨物が本邦の国境線を越えて本邦に入ってくること。
- 具体的な輸入の次期は、外国貿易船等から陸揚げするとき。
- 保税蔵置場に蔵入れしようとする貨物や仮陸揚貨物等も、本邦で陸揚げされたものなので、外為法上の「輸入」された貨物に該当。
輸出許可の特例(輸出令4条)
仮陸揚貨物
本邦以外の地域を仕向地とする船荷証券(航空貨物運送証等を含む)により運送されるものに限る。
ただし、輸出令別表3に掲げる地域(輸出管理徹底国)以外の地域(例:大韓民国)を仕向地とするものは、「補完的輸出規制」の要件のいずれにも該当しないものに限る。
(もし該当したら許可が必要=関税法の積戻し申告も必要)
輸出令別表1の1項(通常兵器および大量破壊兵器)は常に輸出許可が必要。
輸出承認の特例(輸出令4条)
仮陸揚貨物
- 関税法上の仮陸揚貨物
- 外国から本邦に到着した貨物で輸入が許可される前のものであって、保税地域に搬入されているもののうち、蔵入れ、移入れまたは総保入れの承認を受けていないもの。
ただし、輸出禁制品(輸出令別表2の37~41、43~45)、輸出令別表2の1(ダイヤモンド原石)、35(オゾン層破壊物質)および35の2の項(特定有害廃棄物等および廃棄物)に掲げる貨物は輸出承認が必要。
輸入承認の特例の適用除外の除外=適用(輸入令14条)
①仮陸揚貨物
- 関税法上の仮陸揚貨物
- 外国から本邦に到着した貨物で輸入が許可される前のものであって、保税地域に搬入されているもののうち、蔵入れ、移入れまたは総保入れの承認を受けていないもの。
②船舶または航空機により輸出した貨物で、当該船舶等の事故のため積み戻したもの
特例の適用除外とされる貨物(オゾン層破壊物質、ワシントン条約に定める動植物、化学兵器用の毒性化学物質、水銀、ダイヤモンド等)であっても、経済産業大臣の輸入承認および輸入割当が不要
難破貨物等の運送(関税法64条)
特定の外国貨物は、そのある場所から開港、税関空港、保税地域または税関官署に外国貨物のまま運送することができる。
対象貨物
- 難破貨物
- 運航の自由を失った船舶または航空機に積まれていた貨物
- 仮陸揚貨物
運送手続き
原則
- 難破貨物等の運送をしようとする者は、税関長(税関が設置されていない場所においては税関職員)の承認を受けなければならない。
- 税関長は、運送の承認をする場合には、相当と認められる運送の期間を指定しなければならない。
例外
- 税関が設置されていない場所から運送することについて緊急な必要がある場合において、税関職員がいないときは、警察官にあらかじめその旨を届け出なければならない。
積戻し申告
- 「積戻し」は関税法独自のもので、関税関係法令以外では「輸出」になる。
- 一般の輸出申告書の標題を「積戻申告書」と訂正したものにより行う。
不要
- 仮陸揚貨物(外為法の輸出承認または輸入承認を受けなければならない仮陸揚貨物もこっち)
必要
- 本邦から外国に向けて送り出す外国貨物
- 仮陸揚貨物が、外為法48条1項(輸入の許可等)の規定による経済産業大臣の許可を受けなければならない貨物である場合
関税法70条(証明または確認)
- 関税関係法令以外の法令の規定により輸入に関して許可、承認その他の行政機関の処分またはこれに準ずるもの(許可、承認等)を必要とする貨物については、輸入申告の際、その許可、承認等を受けている旨を税関に証明しなければならない。証明がされない場合には、税関による輸入の許可がされない。
- 関税関係法令以外の法令の規定により輸入に関して検査又は条件の具備を必要とする貨物については、関税法67条(輸出または輸入の許可)の検査その他輸入申告に係る税関の審査の際、他の法令の規定による検査の完了または条件の具備を税関に証明し、その確認を受けなければならない。確認を受けられない場合には税関による輸入の許可がされない。
過去問の正しい答え
- 総合保税地域における保税作業による製品である外国貨物を外国に向けて積み戻す場合は、他法令確認を要する。(関税法75条において準用する同法70条)
- 仮陸揚貨物のうち、外為法48条1項(輸出の許可等)の規定による許可を受けなければならないものを外国に向けて積み戻そうとする場合には、税関長に積戻し申告をし、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない。(関税法75条かっこ書)
- 仮陸揚貨物を外国に送り出す場合には、関税法70条(証明または確認)の規定が適用され、当該許可を受けていることを税関に証明しなければならない。(関税法75条かっこ書)
- 関税関係法令以外の法令の規定により、輸出に関して許可を必要とする貨物については、積戻し申告(仮陸揚貨物※に係るものを除く。)の際、当該許可を受けている旨を税関に証明する必要がある。(関税法75条、同法70条)
※経済産業大臣の輸出許可が必要な仮陸揚貨物は含まない。

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